いつもの街を、ひと駅ぶんゆっくり
夕方の風が気持ちよくて、ひと駅ぶん歩いて帰ることにした。電車の中からは見えないほうの道を選ぶと、初めて見る小さな本屋があった。
ガラス戸の内側に、手書きの営業時間が貼ってある。今日は閉まっていた。棚には背の低い本が多く並び、奥に椅子が一脚だけ見えた。
その先で、焼いたパンの匂いがした。こちらはまだ開いていたので、丸いパンを二つ買った。紙袋を抱えて歩くと、腕の内側が少し温かい。
駅へ続く大通りに戻ったころには、袋の窓がうっすら曇っていた。家までもう少し。ひとつは明日の朝にと思っていたけれど、たぶん今夜、二つとも食べてしまう。