鉛筆を削って、三行だけ
引き出しの奥から、短くなった鉛筆が出てきた。最初のころは、この鉛筆でノートを書いていた。手に取ると、指の置き場所が少し窮屈になっている。
削り器を回すと、木の匂いがした。細くつながった削りかすを、捨てる前に少し眺める。芯を尖らせすぎたので、ノートの隅に小さな丸をいくつか描いて、先を丸くした。
昼に食べた卵焼きのこと。角の金木犀が、まだ咲いていないこと。去年つけたシャツのボタンが、ちゃんと留まっていること。三行書いたら、書くことがなくなった。
前のページを少しめくる。何もなかった日が、ずいぶんたまっていた。ノートを閉じると、削ったばかりの匂いが、まだ手元に残っていた。