夕方の道に、沈丁花がいた
夕方、いつもの道で足が止まった。寒い空気の中に、ふっと甘い匂いが混じった。見回すと、低い植え込みに沈丁花が咲いていた。
花の名前は、去年、近所の人に教わった。忘れたつもりでいたのに、匂いをかいだら出てきた。知っている名前がひとつあるだけで、道の歩き方が少し変わる。
近くにしゃがんでみると、花は外側が赤く、開いた内側は白かった。通りかかった犬に不思議そうに見られて、なんとなく立ち上がった。
夜、上着を脱ぐときにも、まだ匂う気がした。襟に顔を近づけてみたけれど、洗剤の匂いしかしなかった。思い出のほうに、ついてきたのかもしれない。